【Short Review】マルチエージェントを用いたCO2排出権デリバティブ市場の分析
サマリー
CO2の排出量に応じて企業に金銭的な負担を求める「カーボンプライシング」の導入が国内で検討されており、GXリーグにおける排出量取引制度は2023年度から試行的に開始し、2026年度から本格稼働を予定している。東京証券取引所においては2023年度にカーボン・クレジット市場を創設する。
一方、欧州では2005年に欧州連合域内排出量取引制度(EU-ETS)が導入され、すでに多くの経験を積んでいる。欧州証券市場監督局「Final Report - Emission allowances and associated derivatives」によれば、EU-ETSは、CO2排出権のみならず、CO2排出権デリバティブ取引についても、取引が拡大している。
我が国においてもCO2排出量取引が拡大すれば、ヘッジツールとしてデリバティブ取引(先物取引、オプション取引)が重要になるであろう。
CO2排出権オプション取引を分析するため、まずはCO2排出権取引とそのオプション取引についてマルチエージェントを用いて人工市場を構築する。人工市場の構築にあたり、遺伝的アルゴリズムを用いて、エージェントのパラメータを推計する。発注サイズ変更等のシナリオを人工市場に与え、オプション取引等への影響を分析することにより得られた有用な知見を報告する。