住宅ローン債務者のプリペイメント動向について

サマリー

国内銀行のバランスシートを確認すると、全体の貸出残高は減少しているものの、住宅ローンの貸出残高は増加している。このような状況は、多くの国内銀行にとって、住宅ローンの重要性が増していることを示しており、その動向を把握することは、戦略的な収益性管理・営業戦略の強化の観点からも重要な課題となっている。
住宅ローンの重要な性質の一つとして、契約上の返済期限前に借入資金の返済が可能であることが挙げられる。従って、銀行は、ALMの観点から住宅ローンをより精緻に管理するために、貸出年限を推計するプリペイメント(期限前償還)モデルを活用する必要があると考えられる。
従来型のプリペイメントモデルは、主にプライシングやリスク管理に限定されて利用されてきたこともあって、「経年効果」、「金利インセンティブ効果」、「季節効果」等の代表的な要因をモデルに組み込んだ上で貸出年限の推計が行われている。しかし、戦略的な収益・リスク管理を行うためには、このような代表的要因だけではなく、例えば、債務者を属性別に分析するなどの必要があろう。
本稿では、プリペイメントの要因として、従来考慮されてきた代表的な要因と、従来考慮されてこなかった債務者の属性による期限前償還率の特徴について、住宅金融支援機構のデータを用いて分析した。その結果、従来考慮されていた要因(経年効果、金利インセンティブ効果、季節効果)だけではなく、返済負担率別、地域別、都道府県別、年収別、職業別、性別といった、債務者の属性に関する要因を分析した場合、明らかに期限前償還率に差異があることが確認出来た。これらの分析結果を踏まえると、債務者の属性を考慮したプリペイメントモデルを開発することが出来れば、債務者の属性に応じた貸出金利の設定等の戦略的な収益・リスク管理を行うことが可能となり、ALMの高度化にも寄与すると考えられる。

全文ダウンロード

サービス・事例紹介

この記事に関連する当社のサービスや事例のご紹介をご希望の方は、下記よりお問い合わせください。
担当研究所・研究員からご案内をいたします。

ご意見の投稿

この記事についてご意見をお聞かせください。
今後のサイト運営や、レポートの参考とさせていただきます。

  • 戻る
  • ページ先頭へ戻る