CO2排出量に応じて企業に金銭的な負担を求める「カーボンプライシング」の導入が進んでおり、欧州においては、2005年に欧州連合域内排出量取引制度(EU-ETS)が導入され、排出権取引の中心的な役割を果たしている。EU-ETSは、試行期間のフェーズ1に始まり、現在は2030年に向けたフェーズ4となり、フェーズの移行とともに対象となる国・業種等が拡大している。近年の取引は、規制対象となるCO2排出企業に留まらず、価格変動による利益を期待した投資家などに広がりをみせている。また、小口の投資家が取引しやすいようにETFやETNなども設定されている。
本研究では、投資商品としての側面も強まっているCO2排出権に対し、一定の条件の下でテクニカル分析を用いて売買した場合の投資成果についてのシミュレーション結果を確認する。また、時系列分析や機械学習を用いた売買手法とテクニカル分析を比較し、売買手法による推計結果の違いを考察する。
分析の結果、テクニカル分析を用いるとレンジ相場においてプラスのパフォーマンスが得られ、トレンド相場についてはマイナスのパフォーマンスとなる結果が得られた。時系列分析(ARIMAX)と機械学習(Random Forest)については、テクニカル分析と似た傾向を示す可能性があり、機械学習については、テクニカル分析や時系列分析と比べて「買い」または「売り」と判断する回数が多い結果となった。