【Short Review】CO2排出権のデリバティブ取引の動向
サマリー
CO2の排出量に応じて企業に金銭的な負担を求める「カーボンプライシング」の導入が国内で検討されている。GXリーグ本格稼働に向けて、東京証券取引所が2022年9月にカーボン・クレジットの試行取引を開始したが、欧州では2005年に欧州連合域内排出量取引制度(EU-ETS)が導入され、すでに多くの経験を積んでいる。
EU-ETSはキャップ&トレード型であり、欧州の企業は、排出枠の範囲内にCO2排出量を抑える必要があり、排出枠を超える場合は、排出権をトレードにより仕入れて排出量を各企業に割り当てられた排出枠に収める必要がある。
欧州証券市場監督局(ESMA)は、CO2排出権の取引市場について、CO2排出権のみならず、CO2排出権のデリバティブ取引も拡大していると報告している。
我が国においてもCO2排出量取引が拡大すれば、ヘッジツールとしてデリバティブ取引(先物取引、オプション取引)が重要になると考えられ、EU-ETSのデリバティブ取引の動向を見ていく。
まず、スポット価格の裁定の状況を確認の上、先物価格とオプション評価式(Black76)から算出されるインプライド・ボラティリティ(IV)の状況について調査したが、先物価格に金利上昇の影響が反映されており、また、IVについてはスマイルが観測され、株式の先物やオプション取引と同様の傾向が確認出来た。