企業の環境投資に係わる内部資金の利用について~外部資金制約問題の考察~

サマリー

近年、企業は多種多様な環境投資に積極的に取組んでいる。環境投資は、その目的から、「環境負荷軽減を目的とした投資(タイプ1)」「環境配慮型商品の研究開発を目的とした投資(タイプ2)」「社会貢献や環境保全を目的とした投資(タイプ3)」の3つに分類できる。これらの環境投資の特徴の一つに、環境投資は将来の企業収益に対する貢献という点で不確実性が高いことが挙げられる。そのため、企業は、投資に必要な資金を外部から調達することが困難となることを想定し、内部資金を裁量的に利用する可能性がある。この問題は、一般に外部資金制約と呼ばれる。外部資金制約の問題は、上記に挙げた「環境投資の(収益面での)不確実性による外部資金制約」だけが要因となるだけでなく、企業の収益構造によって資金調達が難しい場合があること(「企業自体の外部資金制約」)や、リーマンショック以降の金融危機による影響(「金融危機による外部資金制約」)も考慮しなければならない。そこで本稿では、内部資金の代理指標としてキャッシュフロー(営業利益+受取利息+減価償却費)を用いることにより、環境投資に対する上記3つの外部資金制約が与える影響について分析を行った。
分析の結果、タイプ1やタイプ2の投資は「環境投資の不確実性による外部資金制約」の影響により、内部資金が利用されることが明らかとなった。さらにタイプ2については、「企業自体の外部資金制約」が強いほど内部資金が利用され、金融危機以降においても同様であることが確認された。一方、タイプ3の投資については、企業は内部資金の利用を減らす傾向がみられており、外部資金制約による影響は確認されなかった。これらの結果の背景には、タイプ1やタイプ2の環境投資が企業経営の根幹に係わる情報であるため、企業は外部資金調達のための積極的な情報開示を行わないことが一因として考えられる。

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