本稿では、2020~2022年度の統合報告書に記載のトップメッセージから、経営者が投資家に対しどのような情報発信をしているのかをトピックモデルを用いて分析を行った。主に、財務分析や株主還元といった財務面に関連するトピック、事業戦略やDXといった経営戦略に関連するトピック、サステナビリティや脱炭素といったESGに関連するトピックなどが確認された。
分析結果の一つの特徴として、業種によってトピックの記載比率が異なることが挙げられる。例えばCO2排出量の多い業種では脱炭素に触れることが多く、小売業では自社の理念や考え方などを示す傾向が確認された。
さらに、トップメッセージは企業の財務状況にも依存する傾向にある。例えば、中長期的な事業戦略や財務分析に関する記載は、ROEやPBRといった企業パフォーマンスにより記載割合が異なる。特に、高ROE企業や高PBRの企業の経営者は、事業戦略などの将来に向けたメッセージを発信しているのに対し、低ROE企業や低PBR企業では、そうしたメッセージに躊躇する傾向がある。