コア預金モデルへのストレス検証~東日本大震災後の住宅再建の影響~

サマリー

地域金融機関にとって、コア預金の動向を把握することはリスク管理上の重要な課題である。その際、発生頻度は低いが一旦発生すれば甚大な影響を及ぼす事象(ショックイベント)を考慮することも重要である。そこで本稿では、東日本大震災後の住宅再建に伴って今後発生する資金需要と、それによる金融機関からの預金流出を一種のショックイベントと考え、コア預金の推計年限への影響について分析する。
分析に際して、被災地域の状況を示すデータを概観した後、阪神・淡路大震災のケースを参考に東日本大震災後の2種類の住宅再建シナリオを設定する。また、この住宅再建シナリオの設定においては、「①主な再建資金需要を個人の住宅再建によるものに限定する。②住宅再建に必要な資金の一部は地域金融機関から流出する。③住宅再建方法は新たに土地・建物を購入する。」等の前提を置くことにする。
以上のような仮定の下で分析を行った結果、預金流出額は、被災した全戸を再建する場合には3.8兆円、一部を再建する場合には0.7兆円と推計された。さらに、推定された預金流出額を所与とした場合のコア預金の年限を推計すると、一部の住宅を再建するシナリオの下での影響は限定的だが、全戸を再建するシナリオでは、宮城県及び福島県の地域金融機関のコア預金の年限への影響は非常に大きいものとなる。特に、宮城県の地域金融機関のコア預金の年限は4割も短期化すると推計された。従って、全戸を再建するシナリオを前提にすると、将来、預金が流出した場合の資金繰りの対応に加えて、貸出や有価証券運用の際に年限のコントロールについて留意する必要があると思われる。

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