【Research Report】CVaRとローレンツ曲線、ポートフォリオ最適化問題への応用

サマリー

CVaR(Conditional Value at Risk、期待ショートフォールとも呼ばれる)は、GPIFが基本ポートフォリオ変更の際に利用したことや、バーゼル銀行監督委員会が、バリュー・アット・リスクから期待ショートフォールへの移行を表明したことなどを踏まえると、今後より注目されると考えられる。
本稿では、はじめに、CVaRの定義と最近におけるその活用事例について解説し、その具体的な計算方法として、いくつか存在するものの中から、ローレンツ曲線を利用して計算する方法を紹介する。この計算方法は、CVaRの計算定義を別の視点で捉えただけに過ぎないのだが、リターン分布や信頼区間の違いによりCVaRがどのようなふるまいをするのかを視覚的に捉えることができるというメリットがある。
続いて、ローレンツ曲線を利用して計算するCVaRの応用として、伝統的4資産(国内債券、国内株式、外国債券、外国株式)に対して、リターン分布としてヒストリカルデータを使用する方法(ヒストリカル法)と正規分布を仮定した方法で、CVaRを最小化するポートフォリオ最適化問題を解く事例を紹介する。この事例の結果から、次の2点、「①期待リターンを「経済的中位(実質ベース)」として正規分布を仮定した方法を利用して計算した最適化ポートフォリオの配分が、GPIFが2014年10月末に公開した基本ポートフォリオの配分と一致した」、「②ヒストリカル法を用いて計算したものは、GPIFの基本ポートフォリオに対し、国内株式はアンダーウェイト、外国債券はオーバーウェイト、国内債券、外国株式に関しては、GPIFの基本ポートフォリオに近い水準となった」、ということが分かった。
最後に、2つの最適化手法で差異が生じた最大の要因は、それぞれの計算手法から得られる各資産のCVaRの水準の差に起因すると考えられるが、これをローレンツ曲線における「①最小値となる横軸の値」および「②曲線の最小値」を見ることで視覚的に把握できることを紹介する。これは、単に数値や分布関数の形状を見るだけでは得ることができない捉え方であり、ローレンツ曲線を活用するメリットの一例であるといえるだろう。

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