【Research Report】ファクター投資とポートフォリオ最適化 – ファクター・リスクバジェットを用いた債券ポートフォリオの最適化とリスク管理、期間収益獲得への応用 –

サマリー

本稿では、近年一層注目度が高まっているファクター投資とそのポートフォリオ最適化を融合させたファクター・リスクバジェットの考え方を、投資家のニーズに最も良く合うようにファンドを組み合わせてポートフォリオを構築する方法に応用するための考察を行った。
ファクターを主体としたリスクバジェット・ポートフォリオの構築方法は既に開発され、それに基づくポートフォリオの構築は従来より行われているが、本稿で紹介するRoncalliらによって考案された方法[12]を用いれば、これまでの方法と比較して、ファクターをより「直接的」に制御してリスクバジェットを行うことができる。本稿では、このRoncalliによる「直接的」なファクター・リスクバジェットの方法について説明し、多数の国内籍公募投資信託を組み合わせて投資家のリスクファクター選好ニーズに合った最適なグローバル債券ファンド・ポートフォリオを構築するシミュレーションに応用した。また、債券ファンドに対するリスクファクターは、Thiagarajaらの研究で提唱されている3つのファクターを利用した[13]。
この方法の特徴を把握するために、アセットベースとファクターベースのリスクパリティ・ポートフォリオを作成し、両者の比較を行った。その結果、前者のアセット・リスクパリティ・ポートフォリオは、低リスクアセットへの投資が集中すること、期間収益が相対的に低くなってしまうこと、ファクターによるリスク管理の余地が残る(意図的に制御されていないファクターエクスポージャーや十分に制御されていない残差が存在するリスク)こと、という課題があることがわかった。一方、ファクター・リスクパリティ・ポートフォリオは、アセットベースのリスクパリティ・ポートフォリオや金額パリティ(等金額)ポートフォリオと比較するとシャープレシオでは必ずしも効率的ではなかったが、ファクターによるリスク管理と併せて事前に意図したファクターのリスクテイクができること、ファクターエクスポージャーの取り方をコントロールすることで事前に期間収益の水準をコントロールすることができること、さらにリスクファクターは投資家のニーズに合わせて変更が可能という点では、アセット・リスクパリティ・ポートフォリオと比べてメリットのある投資手法であることを確認することができた。
 

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