地方銀行によるCSR活動と財務パフォーマンス

サマリー

本稿では、地方銀行によるCSR活動が、収益性や不良債権比率などの財務パフォーマンスに与える影響について検証する。顧客基盤を特定の地域におく地方銀行にとっては、地域社会と良好な関係を築き、収益に結び付けることが重要となる。つまり、地方銀行による地域社会に向けたCSR活動の取り組みには、財務パフォーマンスを高める効果があると考えられる。本稿の目的は、この点を実証的に確かめることにある。
分析の結果、CSR活動と収益性の関係についてみると、CSR活動に積極的でない地方銀行において、収益性に関わる一部の変数に正の相関がみられたが、この関係性は金融危機前後でサンプルを分割した場合には確認できなかった。CSR活動と不良債権比率の関係についてみると、分析期間に関わらずCSR活動に積極的な地方銀行に正の相関がみられた。これらの傾向は、CSR活動が収益性と正の相関があることや、リスクと負の相関があることを見出した先行研究とは異なるものであり、CSR活動に積極的な地方銀行が、地域社会に配慮する結果、貸出先の信用リスクからみて正当化されないような、厳密性に欠ける貸出を行っている可能性を示唆している。

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