女性活用と両立支援(1)

サマリー

本稿では、両立支援(家事、育児と仕事の両立)と女性活用(管理職への登用等)がどのように企業パフォーマンスに影響するのかを検討する。巷では、女性の社会進出が経済的な余裕から出生率の向上に繋がるという見方もある一方、仕事と家庭の二者択一を求められることにより出生率にマイナスの影響を及ぼすという考え方も根強い。実際、出産を機に多くの女性が退職する現状では、働く女性にとって出産の機会費用(出産によってあきらめる将来の収入)が極めて大きいと思われる。また、このような二者択一を求められる状況は、出生率への影響のみでなく、個々人の心の豊かさという観点からも望ましくない結果に繋がる可能性がある。なぜなら、仕事の充実で得られる満足感と家庭生活の充実で得られる満足感との間には、必ずしも代替的な関係が存在しない可能性があるからである。このように、社会的、個人の生き方という観点からは「女性活用と両立支援との両立」が望ましいが、仮にこれが企業パフォーマンスに悪影響を及ぼすのであれば、絵に描いた餅とならざるを得ない。社内で充実した仕事と家事・育児を両立している女性の比率が増えることは、より多様な人的資本の充実に繋がる可能性がある一方、そのような両立を支援するコストが企業の負担となる可能性もある。日本企業の女性関連データと財務データを用いて、労働生産性と女性活用との関係を見ると全体としてはプラスの相関関係が見られるものの、統計的に有意とは言えない結果であった。しかしサンプルを両立支援指標で分けると、両立支援が進んでいる企業において、労働生産性と女性活用とのプラスの相関関係が強くなった。この結果は私生活を犠牲にするような女性活用ではなく、私生活と両立しうる女性活用がダイバーシティ効果等を通じて企業パフォーマンスを高めうることを示唆している。次号では回帰分析により、この点を詳細に分析する。

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