【Short Review】役員報酬ガバナンスの実効性の確保に向けて~報酬委員会とマルス条項・クローバック条項~

サマリー

 企業のESGへの取組みが拡大するなかで、経営陣に対して取組みを推進するインセンティブを与える目的で、業績連動型の報酬にその成果や取組みを反映させる事例が増加している。気候変動対応や人的資本経営の実現に向けて、企業毎のマテリアリティに対応したKPIを、業績評価指標として役員報酬に反映させることが、KPIの達成に向け、その実効性を高めるための有効な手段として捉えられている。
 一方で、役員報酬はコーポレートガバナンスの一要素でもある。コーポレートガバナンスの視点で見た役員報酬には、報酬水準、KPIとそれに対する評価方法を含む制度設計、報酬決定プロセスからその管理体制に至るまで、多くの論点がある。本稿ではそのうちの論点の一つとして、報酬委員会等の設置・運営状況とマルス条項・クローバック条項の導入状況を確認した。TOPIX 100や指名委員会等設置会社など、規模が大きい、あるいは高いレベルのコーポレートガバナンスが求められる企業は、より充実した仕組みを構築していることがわかった。
 経営陣へのインセンティブの付与を通じて、企業の行動を変化させうる役員報酬ガバナンスは、今後より一層の注目を集める分野であり、投資家の目も厳しいものとなることが予想される。一見すると守りのように捉えられるかもしれない役員報酬ガバナンスの実効性の確保は、適切なインセンティブの付与を通じて、企業価値を維持・向上させるための土台となり、適正な報酬決定プロセスと管理体制が構築された役員報酬ガバナンスは、より実効性が高いものとして評価されるだろう。

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