【Short Review】日本企業のインターナルカーボンプライシングの動向について

サマリー

1.インターナルカーボンプライシングについて
インターナルカーボンプライシング(Internal carbon pricing、以降ICP)とは、企業自らが気候リスクを経営に反映させるために導入する、主に二酸化炭素への価格付けのことを指す。近年の気候変動に対する意識の高まりや排出関連の規制が将来強化される見込みなどから、気候変動に影響を及ぼす二酸化炭素を排出し続けることを財務的なリスクとして捉える。そして、このようなリスクを軽減するため、二酸化炭素を金銭的に評価し、それを設備投資や事業機会など、長期的な経営の意思決定に反映する。すなわちICPとは企業自らが低炭素へ移行し、それを管理する手法の一つである。
2014年初期の調査では、世界で150の企業がICPを導入していた(CDP(2014))。導入当初のインターナルカーボンプライス(以下、ICPs)は0.1~360 USD/トンであり、まだ広範で一般化された方法が確立されていなかった。そのため、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)は2015年にガイドラインを公表し、ICPを導入した世界14企業の具体的な事例、カーボンプライスを設定するまでの企業内での一連のプロセスを紹介するなど、実践的なガイドラインを提示した(WBCSD(2015))。こうした取り組みにより、2020年時点では世界で853社が導入している(CDP(2020))。
非財務情報の開示でもICPの導入とその開示を提言している。TCFD(気候変動財務情報タスクフォース)は2017年に公表した開示の実務書”Implementing the recommendations of the task force on climate-related financial disclosures”の中で、指標と目標(Metrics and Targets)に関する開示の一つとして、戦略とリスク管理に沿って評価する際にICPsの開示を提言している。これに続き、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)も2021年に公表した気候関連開示のプロトタイプ”Climate-related Disclosures Prototype”の中でTCFDと同様に、指標の一つとして開示を求めている。
日本では、環境省が2020年3月に「インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン」を公表し、ICPの導入の意図、価格設定のプロセスやICPの活用方法、価格の運用プロセスなどの紹介だけでなく、海外企業の事例や「インターナルカーボンプライシング活用支援事業参加企業」に応募した国内企業13社の導入ケースを紹介している。
以下では、インターナルカーボンプライシング導入の意図とその事例について紹介し、さらに日本企業における直近3年間のICP導入状況や、ICPsの状況について確認する。

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