長期資産運用において王道とも言われている分散投資であるが、サブプライム・ショックのような“イベント”が発生すると資産間の相関が高まり、分散投資効果が低下することが知られている。昨年もギリシャ・ショックという“イベント”があり、資産間の相関の高まりと共に、最近では分散投資の有効性を疑問視する論調もみられる。
そこで本稿では、山本(2009)の分析フレームワークに従って、分散投資の有効性及び最適資産配分について簡単な検証を行った。具体的には、1980年1月末から、その後1年間で最もリターンの高かった資産に全額投資することを、毎年1月時点で繰り返した場合(神の資産選択)、及び逆に最もリターンの低かった資産に全額投資することを繰り返した場合(悪魔の資産選択)の2パターンの検証を行った。次に、1980年1月末から3年ごとに資産配分の見直しを行い、3年間のリスク調整後リターン(=実績リターン/実績リスク)が最大となる資産配分を神のアセットアロケーション(事後的最適アセットアロケーション)として投資を行い、これと「J‐MIX」、「バランス」、及び単一資産で運用した場合のそれぞれのパフォーマンスを比較検証した。
検証の結果、「神の資産選択」及び「悪魔の資産選択」の年率換算リターンは、それぞれ22.04%、-10.72%となった。また、神のアセットアロケーションとその他の運用の比較では、神のアセットアロケーションは当然として、分散投資の「J‐MIX」、「バランス」も、リスク調整後リターンは、単一資産で運用した場合よりも優れており、長期における分散投資の有効性を再確認することができた。