【Research Report】私募投信の運用会社ごとのパフォーマンスと運用に関する特徴

サマリー

 新型コロナウイルスの感染拡大により、今年の2月下旬以降は世界的な金融市場の混乱が続き、増加傾向が続いていた私募投信の純資産総額は一時的に減少したが、国内外の金融市場の反転とともに、4月以降は増加に転じ、7月末に私募投信の純資産総額がはじめて100兆円を超え、2020年9月末の純資産総額は過去最高の102.3兆円になった。
 このように私募投信は国内の投資信託の中で大きな存在になっているが、私募投信の運用状況について公表されている情報は投資信託協会の「私募投資信託の資産増減状況」等に限られ、公募投信のように個別ファンドの投資対象や純資産総額、基準価額等は一部の例外を除いて公表されず、運用状況に関する情報が乏しい。
 そこで、私募投信の運用状況を把握する一助として、純資産総額が多く、投資対象や運用手法が多様な私募株式投信について、本山[2020]では2019年12月までの「私募投資信託の資産増減状況」のデータを用いて私募株式投信の運用資産全体のリターンを計算し、過去のパフォーマンスを確認した後、運用資産全体の投資対象をスタイル分析によって推測した。
 投資信託協会では「私募投資信託の資産増減状況」の運用会社別のデータも公表されているため、本稿では運用会社ごとのパフォーマンスと運用に関する特徴について分析した。その結果、運用会社ごとの私募株式投信の運用資産全体のパフォーマンスに関する傾向として以下のことがわかった。
 ・リスクが高いほど、リターンも高い傾向が見られるが、運用会社ごとのばらつきが大きい。
 ・全体的に国内系の運用会社の方がリターンは高いが、リスクも高い傾向がある。
 ・外資系ではリスク・リターン比がプラスの大きな運用会社とマイナスの大きな運用会社がある。
 ・純資産総額が1兆円以上の運用会社と1兆円未満の運用会社では、1兆円未満の運用会社の方が高リスク、高リターンの傾向がある。
 ・1兆円未満の運用会社の方がリスクとリターン、リスク・リターン比のばらつきが大きく、各運用会社のパフォーマンスの格差が大きい。
 そして、運用会社ごとに私募株式投信の運用資産全体のファクター分析を行い、以下の特徴が確認できた。
 ・各運用会社の運用資産全体のαの平均値はマイナスである。
 ・国内株式のβが大きい運用会社が多い。
 ・国内株式のβは国内系の運用会社の方が大きい。
 ・外国株式のβは外資系の運用会社の方が大きく、米ドル円のβも外資系の運用会社の方が大きい。
 ・純資産総額が1兆円以上の運用会社と1兆円未満の運用会社では、どのリスクファクターにおいても1兆円未満の運用会社の方がβのばらつきが大きい。

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