【Short Review】気温上昇を前提にしたマクロ経済成長モデル

サマリー

 世界的に地球温暖化の影響と考えられる異常気象や自然災害が発生し、その規模は拡大し、頻度も増加している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」とし、世界の気温上昇が産業革命前と比べて2021~40年には1.5℃に達することを予測した「第6次評価報告書」の一部を8月に公表した。2018年にIPCCが公表した「1.5℃特別報告書」における想定より地球温暖化は10年程度早く進行しており、その影響の深刻さが増している。
 地球温暖化対策として、気温上昇の原因とされる二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出削減が喫緊の課題となり、さらに二酸化炭素を回収・貯蔵する技術等の開発、実用化が求められている。世界各国は、温室効果ガスの大幅な排出削減を政治目標とし、日本は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」とし、2030年度には2013年度比で46%削減することを目標としている。また、企業や金融機関は排出削減に取り組み、気候変動リスクをコストとしてだけでなく、ビジネス機会とする経営への転換が課題になっている。そのためには、気候変動による経済への影響を定量的に把握することが重要だろう。
 気候モデルと経済モデルを組み合わせたモデルは、統合評価モデルと呼ばれ、ノーベル経済学賞を受賞したWilliam NordhausのDICEモデル(Dynamic Integrated model of Climate and the Economy)等の多くのモデルがあり、政策の決定や政策評価に用いられている。気候変動が地球全体の事象であるため、通常、統合評価モデルは世界を一つ、あるいはいくつかの地域に分割して世界全体を対象とするが、本稿ではこのようなグローバルな分析ではなく、国内経済や特定の地域経済を対象にした分析を行うためのモデルを提示する。

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