GRスコア2020およびGRスコア企業111社のガバナンス状況

サマリー

株式会社には所有と経営が分離していることに起因するエージェンシー問題が発生する。コーポレート・ガバナンスは、エージェンシー問題を緩和するために考案され、工夫されてきた、経営者の規律付けであり、株主と経営者の利害の一致を目指す仕組みである。
世界金融危機(リーマンショック)では、金融業界のコーポレート・ガバナンスの弱さが露呈した。この反省から、英国は1999年以来のコーポレートガバナンス・コードであったコンバインド・コードを廃止し、2010年新たにコーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを策定した。ガバナンスを強化するため、従来の独立取締役会によるモニタリング(コーポレートガバナンス・コード)に、機関投資家株主によるスチュワードシップ責任(スチュワードシップ・コード)を加えたのである。
それから3年後、日本において日本再興戦略、いわゆるアベノミクス第3の矢として、割と唐突にスチュワードシップ・コードが策定された。ガバナンス改革の始まりである。翌年には、日本再興戦略2014改訂として、スチュワードシップ・コードに続いて、コーポレートガバナンス・コードも策定された。両コードの目的は、企業の持続的成長(中長期的な企業価値向上)を目指すため(攻めのガバナンス)であると明記されている。助走なしの矢継ぎ早のコードの策定は、日本企業のガバナンスに懸念を抱いてきた海外機関投資家を驚かせた。なかでもコーポレートガバナンス・コードが独立社外取締役の選任を求めたことは、社外取締役には否定的だと思われていた日本の方向転換として、注目と称賛を集めた。コードは「Comply or Explain」ルールで強制力はないが、日本企業は積極的に独立社外取締役の選任をすすめ、現在では東証第一部上場企業の93%が2名以上の独立社外取締役を選任している(東京証券取引所(2019))。日本企業のガバナンスは大きく変化したのだろうか。
この日本企業のコーポレート・ガバナンスの変化を捉えるため、日興リサーチセンターでは、コーポレートガバナンス・コードを基準としたベンチマーキングによるガバナンスの評価モデルを開発した(ガバナンスリサーチ・スコア:GRスコア)。法規制が最低限守らなければならないバーを示すのに対して、ソフトローであるコーポレートガバナンス・コードは、あるべき姿つまりベストプラクティスを示している。そのため、コードをベンチマークとして、それぞれ企業のベンチマークからの距離を測り、スコア化した。距離が小さいほどガバナンスが強いと評価できる。GRスコアは、日本のコーポレートガバナンス・コード(国内基準)に加えて、ICGNグローバル・ガバナンス原則をグローバル基準として、グローバルスタンダードからの距離も測っている。我々は時価総額の大きいトップ100社を対象に、2017年よりベンチマーキングを開始した。毎年、日興リサーチレビューで結果を公表しているが、4年目となったGRスコア2020では、GRスコア2020の結果に加えて、GRスコア対象企業111社の詳細なガバナンスの状況を報告する。
 

全文ダウンロード

サービス・事例紹介

この記事に関連する当社のサービスや事例のご紹介をご希望の方は、下記よりお問い合わせください。
担当研究所・研究員からご案内をいたします。

ご意見の投稿

この記事についてご意見をお聞かせください。
今後のサイト運営や、レポートの参考とさせていただきます。

  • 戻る
  • ページ先頭へ戻る