グリーンボンド:低炭素社会へのファイナンス

サマリー

気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)の下、京都議定書以来18年ぶりの国際的な枠組として合意されたパリ協定は、2020年以降の温室効果ガス削減の取組みを決めている。パリ協定において「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことを目指すとしているが、この目標の意味するところは、「そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる」である。つまり、現在は増加を続けている二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を、今世紀前半にピークアウト、減少へと転じ、2100年までに温室効果ガスの排出ネットゼロにするというものだ。
2018年10月に発表された国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別レポート「Global Warming of 1.5℃」では、平均気温上昇が1.5℃に抑えられた世界と温室効果ガス削減のスケジュールを展望している。1.5℃達成のためには、より迅速で徹底的な低炭素社会への転換が必要であり、土地利用、エネルギー、産業、建物、輸送そして都市において、2030年までに二酸化炭素排出の2010年比45%の削減、2050年には排出と吸収がバランスするネットゼロ状態の達成が必要だとされる。しかも、二酸化炭素吸収の技術はこれからの開発課題である。
この低炭素社会への転換には、インフラや技術開発に巨額な投資を必要とする。OECDはインフラ投資に今後15年間100兆ドル以上が必要だとしているし、国際エネルギー機関(IEA)はエネルギー関連だけで75兆ドルが必要だとしている。このグリーン投資を支える金融をグリーンファイナンスという。パリ合意実現にはグリーンファイナンスの拡大、つまりお金の流れを変えることが鍵なのだ。本レポートで取り上げるグリーンボンドは、債券市場におけるグリーンファイナンスとして注目されている。2015年から2017年の3年間でグリーンボンドの市場規模はグローバルで3.6倍となり、発行体の多様化も進んだことから、日本においてもグリーンボンドへの関心は高まっている。環境省も昨年、グリーンボンドガイドラインを策定、グリーン認証など発行支援に対する補助金を出すなどグリーンボンド市場育成に乗り出している。そこで、日興リサーチセンター社会システム研究所では、実務家や一般の方々にグリーンボンドとは何かを掴んでもらうことを目的に、本レポートを作成した。コンパクトながら、よりグリーンボンドの全体像が掴めるよう様々な側面をカバーした。以降、第1章では、グリーンボンドの背景、グリーンファイナンスとしての貢献、経済的意義を考える。第2章では国内外のグリーンボンド市場について、第3章ではグリーンボンドの基準について見た後、第4章では資金使途別の発行事例をみる。さらに第5章ではグリーンボンドの投資家は誰かということにもふれる。

全文ダウンロード

サービス・事例紹介

この記事に関連する当社のサービスや事例のご紹介をご希望の方は、下記よりお問い合わせください。
担当研究所・研究員からご案内をいたします。

ご意見の投稿

この記事についてご意見をお聞かせください。
今後のサイト運営や、レポートの参考とさせていただきます。

  • 戻る
  • ページ先頭へ戻る