【Research Report】公募追加型株式投信の商品分類別のファンドリターンと投資家リターン
サマリー
投資信託のリターンは投資対象や運用の巧拙、運用に伴うコスト(購入時手数料や信託報酬等)等によって決まるが、投資信託の投資家が運用成績通りのリターンを得ているかどうかは投資家の売買のタイミングが影響する。
投資信託のリターンに対する売買のタイミングの影響について本山[2019]では、公募追加型株式投信(除くETF)全体の資金フローと純資産総額を用いてファンドリターン(時間加重リターン)と投資家の売買のタイミングを考慮した投資家リターン(金額加重リターン)を計算し、過去と比較すると近年の投資家リターンとファンドリターンの差は小さくなっていることを確認した。
しかし、投資家の投資行動は投資信託の商品性によって異なる可能性がある。そこで本稿では、公募追加型株式投信(除くETF)について商品分類(日興分類)別に年次と月次のファンドリターン、投資家リターンを計算し、両リターンの差の検定を行った。
その結果、年次リターンにおける3月末基準のグローバル株式(ヘッジなし)を除いて、どの分類においても統計的に有意と言える差はなく、投資信託の投資家全体としては商品分類に関わらず、投資家リターンとファンドリターンに差があるとは言えないことを確認した。
また、本稿では、本山[2019]では示さなかった投資家リターンの月次リターンを計算したが、月次リターンを用いることによって投資家リターンとファンドリターンの差の短期的な動向を把握することが可能になる。そのため、例えば金融市場のショック等のイベント発生時における投資信託の投資家の動向把握等にも役立つだろう。