【Research Report】ファンドのリスク管理(1) ~主成分分析を用いたファクターモデルによる金利リスクの計測~

サマリー

 地域金融機関の投資信託(以下、ファンド)の保有が増加し、収益に対する影響が大きくなると同時にリスク管理の重要性が高まっている。そして、銀行勘定の金利リスク(IRRBB)の国内適用により、原則、国内外の債券を投資対象とするファンドについても金利リスク計測の対象となる。
 IRRBBにおいて国際統一基準行は、イールドカーブについてパラレルシフトだけでなく、イールドカーブの形状変化を含む合計6通りのシナリオにおける経済的価値の変化(ΔEVE)の計測が求められる。国内基準行に対しては現時点で未定ではあるが、金利シナリオとして上方パラレルシフト、下方パラレルシフトに加えて、スティープ化の3通りのシナリオの適用案が金融庁より公表されている。
 本稿では、地域金融機関の有価証券の運用状況を確認し、ファンドの金利リスクの計測手法を検討した後、イールドカーブの形状変化を含む金利シナリオにおけるΔEVEを計測するために、ファンドのファクターモデルのファクターとして「イールドカーブの変化に対する主成分分析によって得られる主成分スコア」を利用する手法を検証する。具体的なファンドについて6通りのシナリオにおけるΔEVEを計測した結果、対象としたファンドについては経済的価値の減少率が最も大きい(保守的な)金利シナリオはパラレル上昇であることを確認した。
 実務への活用のためには、より精緻な結果を得るための調査が必要であるが、この手法によると多様な金利シナリオによるファンドの感応度分析(ファクターモデルによるファンドのリターンへの影響分析)ができ、ファンドのVaRを金利リスク、為替リスク等に分解してリスク管理を行うことができる。そして、この手法によって得られるGPS(グリッド・ポイント・センシティビティ)を用いると他の金利系資産、負債との統一的なリスク管理が可能になり、ALMの高度化に役立つだろう。

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