【Research Report】属性別および都道府県別流動性預金残高の市場金利に対する反応

サマリー

銀行勘定の金利リスク(IRRBB)が国際統一基準行に対して20183月末から適用され、国内基準行についても20193月末から適用される予定となっていることを受け、これらの預金取扱金融機関は金利リスクの適切な管理に努めている。しかし、流動性預金は金利リスクの推計が難しく、様々なコア預金モデルがあるものの、決定的なモデルがないのが現状である。そこで、本稿では、流動性預金残高に影響を与える変数として広く知られ、主要なコア預金モデルの1つである金利参照型モデルで利用されている金利に着目し、属性別および都道府県別の流動性預金残高との関係、特に、流動性預金残高が市場金利に対して遅れて反応する遅行性について調べた。

属性別では、「一般法人」は流動性預金残高の市場金利に対する弾力性が大きく、反応のスピードも速い一方、「個人」は流動性預金残高の市場金利に対する弾力性が小さく、反応のスピードも遅い傾向があることが確認された。金利参照型のコア預金モデルでは、一般に、反応の遅行性は考慮されておらず、「個人」の場合はこの遅行性を回帰式の入力データに反映させることにより、モデルの説明力が向上することが示唆された。

都道府県・地域別では、属性別の結果から想定された通り、法人が多く個人預金の比率が低い大都市部は流動性預金残高の市場金利に対する弾力性が大きく、反応のスピードも速い一方、個人預金の比率が高いベッドタウンを抱える地域や地方は流動性預金残高の市場金利に対する弾力性が相対的に小さく、反応のスピードも総じて遅い傾向がみられた。また、都道府県・地域別では市場集中度(金融機関の寡占度)との関係についても調べ、それが高いほど、市場金利に対する流動性預金残高の負の相関性が総じて低下する傾向が確認された。金融機関の寡占度が高まると市場金利の上昇時に定期預金金利が上昇しにくくなり、流動性預金残高も減少しにくくなると考えられる。これらの結果により、都道府県・地域別でも属性別と同様に、流動性預金残高の市場金利に対する反応の遅行性や相関係数などが異なることが確認できたと同時に、金利参照型のコア預金モデルを想定した場合、モデルの説明力が都道府県ごとに異なること、市場金利に対して期間を一定程度遅らせた流動性預金残高のデータを利用することにより、モデルの説明力が向上することなどが示唆された。

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