企業の両立施策に対する人的資源管理論的アプローチの可能性

サマリー

両立施策が、福利厚生的な位置づけから人事施策としての位置づけへと移行していることに伴い、本稿では両立施策に人的資源管理論からアプローチする方法について検討する。従来人的資源管理に関する研究は、人的資源管理の実践が組織に及ぼす影響について、従業員個々人というミクロの視点から、モチベーションや組織コミットメント、従業員満足などを成果変数とする枠組みで行われてきた。これに対して戦略的人的資源管理(SHRM;Strategic Human Resource Management)はマクロの視点から、企業のパフォーマンスや競争優位を成果変数として設定し、人的資源管理から生み出されるモチベーション、組織コミットメント、従業員満足などを中間成果変数として成果変数に与える影響を分析しようとする枠組みである。両立施策に関する先行研究は、両立施策は他の人的資源管理施策と交互作用を生成し、その結果として従業員の活性化をもたらす可能性(人事施策としての内的整合性)が存在することを示唆している。更に、組織のパフォーマンスに対しては、両立施策が直接影響する人的資源管理成果(人事施策の影響によって生み出される従業員の行動や意識)を通じて、最終成果である企業の財務パフォーマンスに非線形的、多層的に影響を与えている可能性があることも示唆している。人事施策として企業パフォーマンスに影響をあたえる両立支援の可能性を探索するには、戦略的人的資源管理のフレームワーク、特に要因間に相乗効果や、非線形な関係を認める「コンフィギュレーショナル・アプローチ」の適応による分析が有効ではないかと考える。

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