組織コミットメントと離転職意識(1)

サマリー

離転職などを抑制する効果や生産性や業務遂行能力の向上との関係で研究されてきた構成概念に組織コミットメントがある。
組織コミットメントは、個人と組織の関係を互酬性からとらえようとする「交換アプローチ」、あるいは価値の一致や共有でみる「価値アプローチ」などの立場があるが、現在ではそれらを下位因子にもつ多次元モデルとして捉えられることが主流となっている。
関本・花田(1985,1986,1987)の研究は日本の大企業に勤務する大卒男性ホワイトカラーを対象に1984年に実施した調査により、組織コミットメント(帰属意識)が「目的」「意欲」「残留」「功利」の4つの下位因子から計量的に捉えられる概念であることを示した。
抽出された4因子を対象としたクラスター分析では、帰属意識が5類型に集約されること、「団塊の世代」以降では、「自己実現」や「功利」を示すクラスターに属する従業員の比率が多く、世代間で違いが見られること等を指摘している。また組織コミットメントを高める要因として、「会社の魅力」「仕事の魅力」「給与の公平感」などを指摘した。本稿では、この関本・花田(1987)の実証研究をベースに、1980年代半ばと現在では、日本人従業員の組織コミットメントはどのように変化したか、また組織コミットメントを規定する職務満足に関する要因や、組織コミットメントから影響を受けるとされる離転職意識、労働意欲や本人が認識する生産性の向上に与える影響は変化しているのか、について本年10月に日興フィナンシャル・インテリジェンスが実施したアンケート調査の結果から分析する。その結果、被調査者の属性の違いに留意する必要はあるが、関本・花田(1987)が5類型を検出したクラスター分析では、2クラスターの検出にとどまり、また、組織コミットメントを高める要因とされた「仕事の魅力(本稿では「仕事満足」)」などは、組織コミットメントに対してマイナスとなる可能性も見出された。ただし、組織コミットメントの離転職意識抑制や、労働意欲・本人が認識する生産性への向上効果は確認され、組織コミットメントが企業にとって重要な構成概念である可能性に変わりはない点も示された。

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