国際経営モデルと多様な人材活用に関する一考察

サマリー

2008年上半期の日本企業の海外企業に対するM&Aは金額ベースですでに2007年通期の金額にほぼ並び、過去最高のペースであるという。有望な海外マーケットへのアクセスだけでなく、ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源の獲得を目指すケースが増え、国際的視点から企業活動の調達・配分・運用を行うマネジメント能力が、ますます重要となる。
企業の国際化を説明する理論には、伝統的には生産要素の比較優位、そして規模の経済による競争優位があるが、範囲の経済による競争優位、連結の経済による比較優位もそれに加えられ、先進国グローバル企業の戦略の類似性が高まる近年は、新たな差別化の源泉は「マネジメントの質」にあるとの指摘もある。
国際経営展開のモデルには、発展段階をモデル化した発展段階モデルと、企業の戦略的選択により国際化のタイプが決まるとする類型モデルがあるが、両者を融合した進化モデルも提示されている。これらのモデルとともに、人的資源管理もモデル化されている。
人的資源管理はグローバル企業が直面する最も困難なマネジメント課題の一つである。輸出を主眼に規模の経済を追求する戦略を選択する企業では、進出先地域の文化的差異への対応は捨象され、本国中心・語学力重視の人材の海外派遣が行われるが、範囲の経済や連結の経済を追及し、資源を国際的に分散配置しカスタマイゼーションに対応しようとする企業は、マネジメントの現地化を進めつつ、異文化に対する適応力を重視した人材の育成・派遣が必要となる。グローバル企業の強みを、世界中の有能人材の利用可能性とすると、マネジメントに必要なのは「規範」による統合と、グローバルに統合された「制度」的裏づけとの指摘もある。
日興フィナンシャル・インテリジェンス(NFI)が実施する上場企業を対象とする調査紙調査の結果を分析すると、国際化にあたり従業員の分散配置を行う企業では、人的資源管理施策が、国際化が企業価値に与える影響を補完する可能性の高いことがわかった。

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