平成19年度退職給付会計50社の状況(速報)

サマリー

3月期決算企業の多くが株主総会を終え、平成19年度の有価証券報告書もほぼ出揃った。
平成19年度は、年金の資産運用にとって平成12年(2000年)~平成14年(2002年)のいわゆるパーフェクトストーム以来の厳しい運用環境となった。サブプライム問題に端を発する世界全面株安、また年後半にかけては米国を中心とする信用収縮やドル安、世界的な資源価格の高騰も加わっての景気減速懸念の高まりなどの影響を受け、大方の企業年金がマイナスの運用結果となったとみられている。
平成18年度(2007年3月決算期)末時点で退職給付債務の額が大きかった一般事業会社50社を対象に、平成19年度(2008年3月決算期)の退職給付会計が企業会計に与えた影響を概観したところ、以下のことが分かった。(1)制度全体の積立比率(年金資産/退職給付債務)が平均的には5%程度低下し、完全積立を達成していた企業は前年から半減していたこと、(2)これは主に年金の資産運用の不振を反映したものと考えられるが、主に期待運用収益と実際の運用実績との差の累計である年金数理計算上の差異の増減をみると、多くの企業で増加(運用がマイナス)の状況であり、年金資産の期央値に対する大きさは平均で-13.5%、また企業の株主資本に対する大きさは平均で-4.7%であったこと、(3)さらに、米国基準適用企業を対象に、平成19年度末の資産配分状況をみると、企業ごとのばらつきが大きく株式への資産配分は30%台~60%台、債券は10%台~50%台程度となっていたこと、(4)またその他資産の内訳をみると、生命保険会社の一般勘定からオルタナティブ投資まで投資先が多様化し、各社が実情にあった資産運用リスクの管理に腐心していると思われること、(5)退職給付制度の実施状況をみると、確定給付型、確定拠出型の複数の制度を組み合わせつつ、確定給付型の年金ではキャッシュ・バランス・プランを導入している企業が多く、制度設計の観点からもリスク・マネジメントに配慮しているとみられること、(6)退職給付信託の状況は、退職給付会計導入当初に比較すると重要性は低下してきていること、などである。

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