ISO26000のドラフトにみる人権、労働慣行、環境

サマリー

ISO(International Organization for Standardization;国際標準化機構)がSR(社会的責任)についてのガイダンス規格(ISO26000)の検討を進めている。現在の予定では最終的に2009年11月に発行する見通しである。
ISO26000の策定プロセスが多様なステークホルダーによる議論とコンセンサスをベースとしていること、また策定のためのワーキング・グループへ、日本は産業界を中心に積極的に参画していること等の理由から、発行後は日本企業の中にもこのガイダンスを参照・準拠使用とする動きがでてくる可能性も高いと思われる。本稿では、現在作成途中の草稿をもとにISO26000がどのようなコンセプトのもとで、どのような経緯をたどり、どのような内容を含むものとなるか、今後変わりうることを前提に概観してみる。
ISO26000はSR(社会的責任)の定義を定めることとしているが、認証規格とはならないこと、企業だけではない多様な組織に提供範囲を拡大することなどを意図している。核となるSRの課題は、環境、人権、労働慣行、組織のガバナンス、公正な事業活動、コミュニティ参画・社会開発、消費者の7つとなる見込みである。
規格の作成過程は「マルチ・ステークホルダー」「コンセンサス・ベースの意思決定」を特徴とする。また、ISOは規格の作成にあたって既存の文書、条約および他のISO規格と矛盾しないことを明らかにしており、特に国際労働機関(ILO)とは、ISO26000がILO協定と一致するようにするための覚書(MOU)も交わしている。
SRの定義については暫定的に「組織の意思決定と行動が社会および環境に与えるインパクトに対する責任で、透明度が高く倫理観の高い行動によって示される」と定義された。「透明度が高く、倫理観の高い行動」とは「持続的発展と社会の繁栄とに一致」し、「ステークホルダーの期待を考慮」したものであり、「法に従うと共に国際的な規範に一致」し、「組織全体で統一された」ものであるとされている。

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