【Research Report】東証要請「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に対する企業の開示状況について ~JPXプライム150指数の構成企業などを中心に~

サマリー

東証が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請して以降、PBRをはじめとする企業の市場評価やROEなどの資本収益性に対する問題意識が広く惹起された。
本稿では、東証要請の対象企業のうちJPXプライム150指数の構成企業を含めた295社を対象に、その対応状況(2024年2月末時点)を確認する。まず、情報開示を実施した企業は63%(185社)であり、開示予定も含めると73%(216社)の企業が東証要請に応えていることが確認できた。特に、PBR1倍未満の企業については、時価総額水準や業種に関係なく開示率が高く、この点において東証要請は一定の効果があったものと考える。
また、東証要請における個別具体的な要請項目のうち、「現状分析」においては、資本コストに言及する企業数が資本収益性に言及する企業数と比較して少ないこと、両指標に言及する企業数が少ないこと、現状評価をした企業数が少ないこと(その要因分析を説明する企業は更に少ない)、ならびに取締役会の関与を明確に記載する企業数が少ないことなどがあげられる。
他方、「計画策定・開示」においては、資本収益性の改善のための「方針・目標」の設定、ならびに具体的な「施策」では大宗の企業が情報開示していた。
これらの点からは、企業が自社の資本コストと資本収益性を的確に把握し、取締役会で現状分析・評価を行うという東証要請の「現状分析」については更なる改善が望まれる。
東証要請を踏まえた企業の開示は、中長期的な企業価値向上に向けた「はじまりの一歩」に過ぎず、企業が策定した資本収益性改善のための計画に基づき、資本コストや株価を意識した経営を推進するとともに、投資家との積極的な対話を実施し、資本収益性改善のPDCAサイクルを持続的に回していくことを期待したい。

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