【Short Review】インターナルカーボンプライシング(ICP)に係る開示規制と欧米企業による開示事例からの示唆

サマリー

企業の多くは、2050年にGHG排出量ネットゼロを目標に掲げて、脱炭素に向けた様々な取組みを行っている。こうした取組みのひとつとして、一部の企業ではインターナルカーボンプライシング(Internal Carbon Pricing、以下「ICP」)を活用し始めている。CDPの調査によればICPを導入する日本企業は増加傾向にあるものの 、自社のHPなどの開示媒体を通じてICPを積極的に開示している企業はまだまだ少ない 。
他方、各企業が脱炭素に向けてどの程度貢献しているのかという点については、株主・投資家を含めたステークホルダーにとって関心事項でもあることから、2017年6月にTCFD提言が公表されて、気候変動関連のリスクと機会に係る開示が開始した。その後、EU、米国においては、それぞれの規制当局が気候関連の開示基準策定を進めている。具体的には、EUにおいては、CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)の気候変動関連の報告要件を定めたESRS E1(European Sustainability Reporting Standards E1、以下「ESRS E1」)が2023年7月に最終化された。また、米国においても、SECが2022年3月に気候関連開示規則案(以下、「米SEC案」) をパブリックコメントに付し、最終案の公表を待つ段階にある。日本においては、2023年6月に最終化されたIFRSサステナビリティ開示基準(IFRS Sustainability Disclosure Standard)の気候関連開示要求事項(IFRS S2 Climate-related Disclosures、以下「IFRS S2」)をベースにして、現在、サステナビリティ基準委員会(以下、「SSBJ」)が2024年3月末までに日本版S2基準の公開草案を公表することを目指して準備中である。ESRS E1、米SEC案、IFRS S2の全てにおいて、ICPに係る開示要求事項が設けられている。
従って、日本企業によるICPの導入も今後進むことが期待されることから、本稿において、それぞれの開示基準におけるICPに係る開示要求事項を説明するとともに、ICPについて先駆的に開示を行っている海外の開示事例を紹介しつつ、期待される開示内容を検討する。

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