【ResearchClip】ソーシャルタクソノミー最終報告書~社会的に持続可能な活動とは何か?その基準案が示される~
- 2022年6月3日
社会システム研究所
- 髙橋 龍生
サマリー
2022年2月に、欧州委員会のサステナブルファイナンスに係る有識者組織であるサステナブルファイナンス・プラットフォーム(Platform on Sustainable Finance、以下、PSF)が、ソーシャルタクソノミーの最終報告書を公表した 。昨年7月に公表された草案 から、内容にあまり大きな変更は見られなかったが、最終的にPSFは、「ディーセントワーク」「エンドユーザーの十分な生活水準と福利厚生」「包括的で持続可能なコミュニティと社会」の3つの社会目標に資する活動を、社会的に持続可能な経済活動と位置づけた。
EUは環境的に持続可能な経済活動を分類するグリーンタクソノミーに加え、社会的に持続可能な経済活動の分類・定義を行うソーシャルタクソノミーの策定に乗り出している。ESGのS(社会)面は、評価および測定方法に統一基準がないため、投資プロセスにおける分析やインテグレーションが困難である、とPSFは指摘している。また、それに起因して、”ソーシャルウォッシュ”の問題も懸念されている。
ソーシャルタクソノミーは、グリーンタクソノミーと同様の分類プロセスを踏襲するとしている。グリーンタクソノミーでは、6つの環境目標を定めた上で、それぞれの目標に「実質的に貢献する基準」および「同時に他の環境目標に重大な害を与えないDNSH基準」に、「ミニマムセーフガード基準」を加えた、3つの基準に充足した経済活動をEUの産業分類NACEによって特定している。しかし、ソーシャルタクソノミーでは、グリーンタクソノミーのように科学的根拠に基づいた分類が定量的にできないため、国際規範や原則を参考に、目標および基準が策定されることになっている。