【Research Clip】ソーシャルタクソノミー ーEUタクソノミーは「社会」にまで拡大ー
- 2022年1月20日
社会システム研究所
- 髙橋 龍生
サマリー
欧州委員会のサステナブルファイナンスに係る有識者組織であるサステナブルファイナンス・プラットフォームが、2021年7月に「ソーシャルタクソノミー」の草案を公表した。EUは環境的に持続可能な経済活動だけではなく、社会的に持続可能な経済活動および企業の分類・定義を行うことで、ESGウォッシュ問題に終止符を打つ狙いだ。今回の草案では、「人間の生活水準の向上」に資する商品・サービスを生み出すといった経済活動レベルだけではなく、「ステークホルダーに悪影響を与えず、好影響を与える」といった企業体レベルでの普遍的な社会目標が提案された。
ソーシャルタクソノミーは、グリーンタクソノミーとの整合性の観点から、できるだけ同様の分類プロセスを踏襲するとしている。グリーンタクソノミーでは、第一に環境目標を定め、それぞれの目標に実質的に貢献する可能性がある経済活動を特定し、科学的根拠に基づいたテクニカルスクリーニング基準、同時に他の環境目標に害を与えないDNSH基準、ミニマムセーフガード基準の3つの基準を満たした経済活動をタクソノミー適格とした。しかし、ソーシャルタクソノミーでは、テクニカルスクリーニング基準のような定量基準を設けることが難しい面がある。
また、草案において、企業が環境・社会パフォーマンスを高め、環境・社会リスクを適切に管理していくためには、「持続可能で良いコーポレートガバナンス」が必要であるとされた。したがって、環境および社会と「ガバナンス」は不可分であることから、EUタクソノミーにおいてはガバナンス目標も併せて設定する必要があるとされた。