【Short Review】LIXILグループの株主提案による取締役候補者の全選任が持つ意味と機関投資家の判断を考察

サマリー

2019年6月のLIXILグループ(5938)の株主総会において、株主提案による取締役6名全員が選任され、もともとは株主提案であった共通候補者(2名)を含め取締役会のマジョリティを占めるという世界的にみても類まれな出来事が起こった。米国では基本的に経営に関する株主提案をすることができない。また、米国では株主提案は拘束力のない参考議決であることに加え、プロキシコンテストを行う場合には多額の費用がかかるケースが多い。近年では、株主総会議案として株主提案された取締役候補者を、会社が株主に送付する委任状勧誘書類への記載を求める権利(プロキシアクセス)を定款に記載する米国企業も増えたが、当該企業で株主から取締役候補が出されたケースはまだない。
一方、日本では株主が持つ権限は強く、株主は株主総会を通じて経営の重要事項の決定に関与することができる仕組みになっている。そのため、日本では昔から株主提案で取締役会をつくることは可能であった。しかし、日本の上場企業には支配株主(親会社)がいるケースが少なくなく、創業家関連が大株主になっている場合も多い。また、政策保有株による持合いや生命保険会社などを通じた安定株主工作で議決権の過半、企業によっては定款変更などに必要な2/3以上を確保している企業もある。従って、株主提案を通じて取締役候補者を立てても、株主総会で過半の賛成票を獲得し、取締役に選出されるケースはほとんどなかった。それだけに、冒頭で述べたように株主提案による取締役候補者全員が選任されたというのは非常に珍しいといえる。
LIXILグループで株主提案による取締役候補者が提出された経緯については、既に多くの国内メディアが報じているため本レポートでの記述は必要最小限にとどめ、機関投資家の判断や議決権行使助言会社が与えた影響を中心に考察を行いたい。

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