【Short Review】定款変更を伴うESG視点の株主提案への機関投資家の判断 ~みずほFGとデジタルHDのケース~

サマリー

日本では株主提案を行うためのハードルが高くないため、毎年多くの株主提案がなされている。一方、株主提案できる内容は、会社法の定めにより株主総会の決議事項に限られることから、ほとんどの株主提案は、(1)増配や自社株買いなどの剰余金の処分、(2)役員の選任、(3)定款の変更、の3つに分類される。上場企業に対して特定の行動や施策を要求する株主提案の場合、形式的には(3)定款の変更と結びつけるかたちで行われる。
定款の変更は特別決議であるため、通常、出席株主の議決権の2/3以上の賛成が必要となる。従って、普通決議である剰余金の処分や役員の選任に比べて可決のハードルは高いが、株主提案による定款変更であっても、可決された際には法的な拘束力を持つ。企業に行動や施策を要求する株主提案の場合、提案の内容によっては企業経営の自由度を制限するような細則の追加となり、企業の根本原則である定款に記載することの適正が問題になってくる。そのため、機関投資家がそうした株主提案に賛成票を投じることは稀とされていた。
近年、中長期的な企業価値の維持向上を目指した施策を要求する、エンゲージメントが目的の株主提案が増えてきている。しかし、形式的には定款変更の要求で締めくくるスタイルが基本であるため、機関投資家においては、提案内容の妥当性と定款に記載することの適切性の両面が、賛成反対の判断材料になっている可能性がある。
国内機関投資家の議決権行使について、従来はどのような賛否を行ったのかを外部から知ることは難しかったが、スチュワードシップ・コードの制定や改訂を受けて、国内機関投資家は個別議案毎の議決権行使状況や理由の開示を推し進めてきた。その結実として、国内機関投資家がどのような理由でどのような議決権を行使したのかが外部からでも分かりやすくなっている。
本レポートでは、そうした機関投資家の議決権行使結果と理由開示をもとに、中長期的な企業価値の維持向上を趣意とするが定款変更を伴う株主提案に対して国内外の機関投資家が賛否を投じた際に、提案内容に対する評価と定款記載の適切性のどちらが焦点になっていたのかを考察する。

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