【Research Report】米国のシェアホルダー・エンゲージメント
- 2016年7月26日
社会システム研究所
- 寺山 恵
サマリー
本レポートは、2015年11月に米国の機関投資家(運用機関、アセットオーナー)に対して行ったヒアリング調査のうち、シェアホルダー・エンゲージメントに関する調査結果をまとめたものである。このヒアリング調査は、2014年、2015年に実施した欧州の機関投資家に対する調査(寺山・杉浦, 2014; 寺山・杉浦, 2016)に続き、米国の機関投資家のESGインテグレーション及びシェアホルダー・エンゲージメントに関する調査として実施された。
米国では、金融危機の後成立したドッド=フランク金融改革法によるガバナンス改革が機関投資家のエンゲージメントを積極化させた。大手公的年金基金、ESG運用機関、メインストリーム運用機関(アクティブ)によってエンゲージメントに対する考え方や方法論はそれぞれ異なるが、いずれも投資プロセスの一部として議決権行使やエンゲージメントを行うことがわかった。Say on Payは役員報酬についての議決だが、経営陣の信任投票にもなっている。また、投資家は、株主による取締役候補の指名であるプロキシ・アクセスを求めている。株主提案にはプロキシ・アクセスが含まれるようになり、大手公的年金基金が提案し、多くの企業で過半数を獲得した。また、アクティビストによるプロキシ・コンテストにおいても機関投資家の動向が鍵となることから、アクティビスト、会社側双方ともエンゲージメントにより機関投資家の説得を試みる。このように、米国では最近シェアホルダー・エンゲージメントが盛んになっている。日本においてもSay on Payやプロキシ・アクセスのようなアジェンダがあると、機関投資家が積極的にエンゲージメントに取り組むようになると考えられる。