条件付請求権の社会的意義に関する考察
- 2006年11月30日
社会システム研究所 CSR調査室
- 立石 隆英
サマリー
将来の不確実な様々な状態に応じて、ある権利が享受できる仕組みがあれば、将来時点の状態の見込みに基づいて、その想定されうる状態に対応する権利を選択することができるしくみを考えることができる。このような権利は条件付請求権(Contingent Claim)と呼ばれている。将来の株価の水準は不確実ながら、ある一定の株価水準以上あるいは以下であるときにその差額を享受できる権利が想定されるオプション取引がこの典型的な事例の一つである。本稿では、まず、株式コールオプションそのものが、パレート最適をもたらしうることを1期間2時点モデルにおいてArrow-Debreu証券を導入して数式的に確認する。この株式コールオプション市場が理論的には市場参加者間でパレート最適になりうるしくみであることを公共サービス市場について考えると、公共サービスによって個々人の生活の満足度が改善するという請求権に関わる市場が条件付請求権市場になることが、社会的にみて望ましいと推論できる。個々人の生活の満足度に関わる請求権に関する考察をする際に条件付請求権的なアプローチも有効であると考えられる。また、このような請求権の価値を考えるにあたって、個々人の生活に関わる様々な満足度に関わる情報の体系的な収集が必要不可欠である。