資産価格形成におけるグローバル要因の考察~責任投資原則(PRI)が資産価格に織り込まれるための課題を考える~

サマリー

本稿では、世界的経済状況への影響度が高いと考えられるG7(先進諸国)の株式や債券価格変動にグローバルな共通要因が反映されているかどうかを検証した。因子分析によって株価指数と債券指数の7つの共通要因を抽出したところ、世界的な景気要因との関わりを持っていると考えられる因子があることが確認できた。グローバルな市場参加者のネットワークの中で、共通の経済的動機が資産価格変動に織り込まれていると考えられ、資産価格に織り込まれる情報は、財務的価値に代表されるファンダメンタルズであると推論できる。
昨年、国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEPFI)と国連グローバルコンパクトによって提示された責任投資原則(Principles for Responsible Investment)では、投資プロセスでのESG(環境、社会、ガバナンス)に関わる評価が求められている。今後、ESGが共通の社会的動機として資本市場のグローバルなネットワークで認識されるためには、ESGがファンダメンタルズに対し、マテリアルな情報として資産価格に織り込まれることが必要不可欠と考えられる。同原則に賛同して署名する機関数が世界的に増加している流れの中でESGとファンダメンタルズとの関連性が世界的な投資家ネットワークの中で認識されれば、グローバルな経済的動機に関わる情報としてESG的評価が資産価格に集約される公算が大きい。資本市場が、世界的に社会システムの抱える様々な課題を解決する役割を担う可能性が出てくるだろう。市場原理に社会的動機が反映されて、資本市場で機能するためには、今後、投資家、企業といった資本市場参加者がESGの財務的価値への影響を考えてゆく必要があると考える。

サービス・事例紹介

この記事に関連する当社のサービスや事例のご紹介をご希望の方は、下記よりお問い合わせください。
担当研究所・研究員からご案内をいたします。

ご意見の投稿

この記事についてご意見をお聞かせください。
今後のサイト運営や、レポートの参考とさせていただきます。

  • 戻る
  • ページ先頭へ戻る