責任投資原則(PRI)の社会的な意味

サマリー

国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)によってPRI(責任投資原則:Principlefor Responsible Investment)が提唱されてから1年が過ぎた。社会のサステナビリティを目的に投資プロセスにESG(Environmental〔環境〕,Social〔社会〕,Governance〔企業統治〕)という概念を盛込むという提案である。法的拘束力がないにもかかわらず、PRI署名機関による投資プロセスにおけるESGへの配慮に関する実践が自主的に進められている。これは投資家の投資行動に利他的価値観が反映される具体的な動きであると解釈できる。責任投資原則が利己的ではなく利他的価値観に基づく新たな投資行動のためのルール(理)を生み出しつつある。これは、投資家が機械ではなく人間であるという当たり前のことを考えれば自然な流れだろう。人間は生来、社会に貢献するという利他的意識の充足感によって人生の肯定感が得られると考えられるからである。機械ではなく人間が投資する世界では、利他的な価値観が投資行動に反映されても不思議ではない。また、責任投資原則に署名した投資機関がその投資プロセスを構築する過程は、その機関に属する個々人に利他的意識を開発するプロセスでもある。本来、人間が持っている利他的意識を投資プロセスで再考する機会を提供している。さらに従来の投資プロセスで使われてきた投資理論は利己的で合理的な投資家を前提としており、利他的な投資家を前提とする投資理論体系の必要性を示唆している。責任投資原則の社会的な意義は大きいといえる。

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