日興リサーチレビュー別冊「カーボンプライシング調査報告書2024年5月」

サマリー

「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来したのです。」という国連のアントニオ・グテーレス事務総長の記者会見における発言で、「地球沸騰化」という言葉が注目を集めました。発言があった昨年の7月は、世界の平均気温が観測史上最高を記録し、実際に体感する暑熱環境や激甚化する自然災害の発生を目の当たりにし、気候変動に対する危機感は一段と高まっています。

気候変動への対応策は2つあります。一つは二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減や森林などの吸収による「緩和」、もう一つはすでに発生しつつある気候変動による影響への「適応」です。
「緩和」については、今年の4月に環境省から公表された2022年度における我が国の温室効果ガスの排出・吸収量が2021年度比2.3%減の約10億8,500万トン、2013年度比では22.9%減となり、2050年ネットゼロに向けた減少傾向が継続しています。しかし、人口の増加が続く世界全体に目を向けると、2023年のエネルギー起源の二酸化炭素の排出量は、過去最高の約374億トンになり、増加を続けています(国際エネルギー機関(IEA)の2023年年次報告書)。気温上昇を、ある水準で抑えようとする場合に温室効果ガスの累積排出量の上限が決まるカーボンバジェットという考え方によると、このままの排出が続くと今後10年足らずで産業革命の時期と比較した気温上昇が1.5℃を超えてしまう可能性が高く、温室効果ガスの排出削減は喫緊の課題になっています。
気温上昇に歯止めをかけて地球環境を守るために「緩和」の重要性が高まる一方で、現実に進行している気候変動への「適応」もさらに重要になっています。例えば、企業であれば、自然災害の発生時の業務継続や回復力を高めること、サプライチェーンの寸断の影響を短期的なものに留めること、長期的な気候の変化に伴うリスクや機会をとらえて対応していくことが不可欠になってきています。

地球規模での変化が顕在化する中、我が国では、政府の脱炭素戦略を盛り込んだ「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」が昨年の5月に成立しました。今後10年間で官民合わせて150兆円を超える脱炭素投資を進めることによって、2050年の温暖化ガス排出の実質ゼロの実現とともに国内企業の産業競争力強化や経済成長を目指しています。また、企業の脱炭素の取り組みを促すために「成長志向型カーボンプライシング」の導入も法律に盛り込んでいます。

弊社が注力するテーマの一つとしてカーボンプライシングに取り組み始めて3年が経過しました。その成果として、炭素価格を導出する経済モデル、カーボンプライシングの動向やマーケットに関する分析および企業や金融機関の取り組みや情報開示に関する調査報告、そして、カーボンニュートラル技術の紹介などをレポートとして弊社のHPに公開しています。
https://www.nikko-research.co.jp/
本ブックレットは、これらのレポート14本をまとめたものです。カーボンプライシングに関するブックレットとしては、昨年4月に発行した日興リサーチレビュー別冊「カーボンプライシング調査報告書2023年4月」に続き、3冊目の発行になります。
興味をもたれたレポートから読み進めていただければ幸いです。

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