カーボンプライシング・プロジェクト報告書

サマリー

1992年リオ・デ・ジャネイロで開催された地球サミットにおいて、世界各国が合意した持続可能な開発(Sustainable Development)とは、地球の温暖化を食い止め地球環境を維持しつつ、経済成長とりわけ、途上国の経済発展と生活水準の向上を目指すというものです。以来、わが国を含め世界の197か国・地域が国際連合気候変動枠組条約(UNFCCC)に署名、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的に温室効果ガス排出削減に取り組んできました。

2015年のパリで開催された締約国会議COP21において初めて「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という世界目標で合意しました(パリ合意)。さらに、2021年の英国グラスゴーで開催されたCOP26において、1.5℃に抑えることを目標とすることが合意されました。IPCC1.5℃特別報告書では、1.5℃安定化の経路として、2030年までに二酸化炭素排出量を2010年比45%に削減、2050年前後に実質的な排出ゼロが示されています。

これを受けて、わが国もCOP26に先駆けて、2020年10月菅首相(当時)が所信表明演説において2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。世界では現在、128か国がカーボンニュートラルを宣言しており、699のグローバル企業も実質排出ゼロの目標を宣言しています*。

*Net Zero Tracker(https://zerotracker.net/) 調べ

このようなカーボンニュートラルの時代にはカーボンプライシングがより重要になると考えます。二酸化炭素排出に価格を付けるという考え方は、古典的な厚生経済学でも提唱されている排出削減手法です。つまり、排出に課税し、排出削減に補助金を出すことにより、排出削減が達成されるというものです。また、排出権取引など外部不経済を市場に内生化する試みも削減に有効とされます。しかし、カーボンニュートラルは二酸化炭素排出の削減の取り組みだけでは達成できません。例えば、企業は削減に取り組みますが、最終的には削減しきれない排出が残ると考えられます。この排出については、いかに課税してもゼロにはできません。実質排出ゼロのためには、誰かに大気中から排出と同量の二酸化炭素を回収してもらう必要があります。このように、各主体が排出実質ゼロを達成するためには、カーボンを広くやり取りする必要があるのです。これは、グローバル・カーボン市場の形成を予想させます。

グローバル・カーボン市場はどのように形成されていくのか。この市場において、価格発見機能はどのように装備されるのか。このような問題意識から、弊社内にカーボンプライシング・プロジェクト(CPP)が立ち上がりました。CPPは、2021年度自主プロジェクトとして社内有志が参加しました。各研究員が、カーボンプライシングの理論、カーボンプライシングの現況あるいはカーボンプライシングに影響する技術など、多様な側面から調査研究を試み、その成果を日興リサーチレビューとして発表しました。本ブックレットは、CPPリサーチレビュー15本をまとめたものです。

CPPリサーチレビューは、経済モデルによるカーボンプライシング、企業や金融機関におけるカーボンプライシング、オフセット市場や企業のインターナルカーボンプライシング、さらにカーボンニュートラル技術といったテーマをカバーしています。興味をもたれたテーマから読み進めていただければ幸いです。

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