日興リサーチレビュー別冊「カーボンプライシング調査報告書2023年4月」

サマリー

温室効果ガスの排出による地球温暖化の問題には解決を難しくする2つ(空間軸と時間軸)の側面があります。1つは自国の温室効果ガスの排出が他国(地域)に影響する世界全体の問題であること(空間軸)、もう1つは現在の排出が将来に影響する世代を超えた長期的な問題であることです(時間軸)。
前者については、地球温暖化対策には国際協調が必要であるにもかかわらず、地政学リスクの顕在化という厳しい現実が突きつけられています。ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過し、国際的なエネルギー情勢が大きく変化し、各国のカーボンニュートラルへの取り組みにも多大な影響を及ぼしています。後者については、産業革命以降、経済成長の原動力として人類が温室効果ガスを排出し続けたことが地球温暖化の一因であると考えられ、このまま排出を続けると将来の世代が地球温暖化の影響によって、現在の自然環境を維持できなくなる懸念が増大しています。将来の世代は、現在の地球温暖化対策の意思決定に加わることができないので、現在の世代は将来の世代に対して重い責任を負っていることを認識する必要があります。

厳しい現実の中でも地球温暖化の進行は待ってくれません。カーボンニュートラルへの歩みを緩めることはできず、対応策の1つとして温室効果ガスの排出に経済的な負担を課すカーボンプライシングの導入が各国で進んでいます。一般に、カーボンプライシングという用語は排出量取引や炭素税といった制度を指しますが、弊社では制度だけでなく、温室効果ガスの排出という地球温暖化の一因を経済学における負の外部性として捉えた経済モデルや金融市場の分析によるプライシング(価格付け)も視野に入れて調査・研究を行っています。地球温暖化問題に対する国際協調の必要性を知り、世代を超えた長期的な利害関係を考慮するためには経済理論に基づく価格とその前提を知ることは重要だと考えます。

企業の取り組みに目を向けると、カーボンニュートラル社会の実現には、大規模な設備投資や革新的な技術開発が求められ、投資家や金融機関による多額の投融資が必要になります。そのためには企業の適切な情報開示が鍵を握ります。国内では東証プライム市場に上場する企業にTCFD提言にもとづく開示が求められ、今後、さらに広いサステナブルな分野に関する開示が要請されることになります。
また、低炭素投資・対策を推進するために温室効果ガスの排出に対して企業内部で価格付けするインターナルカーボンプライシング制度を導入する企業が増加しています。

弊社が注力すべきテーマとしてカーボンプライシングに取り組み始めて2年目になります。昨年の4月にカーボンプライシング研究室として組織化し、弊社の研究員が新しいリサーチテーマを設定し、調査・研究を行っています。
その成果として、インターナルカーボンプライシングなどのカーボンプライシングの動向やマーケットに関する分析、企業や金融機関の取り組みや情報開示に関する調査報告、そして、カーボンニュートラル技術の紹介などをレポートとして弊社のHPに公開しています。
本ブックレットは、これらのレポート15本をまとめたものです。カーボンプライシングに関するブックレットとしては、昨年5月に発行した「カーボンプライシング・プロジェクト報告書」に続き、2冊目の発行になります。
興味をもたれたレポートから読み進めていただければ幸いです。
 

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