【Short Review】「排出量取引制度か炭素税か」なのか ~温室効果ガス排出規制の課題と展望~
サマリー
「実のところ、この2つ以外の選択肢はないという事実を認識しておくことは非常に大切だ」。DICEモデルを開発し2018年にノーベル経済学賞を受賞したW.ノードハウス・イェール大学教授は、その著書「気候カジノ」(日本語訳版:P.280)で、温室効果ガスの排出という外部性を内部化するための方法として排出量取引制度と炭素税について、このようにクギを刺している。本稿では、政府の「成長志向型カーボンプライシング構想」のうち、カーボンプライシングによるグリーン・トランスフォーメーション(以下、「GX」(Green Transformation))投資先行インセンティブの中から、「排出量取引制度」と「炭素に対する賦課金(以下、炭素税) 」にフォーカスし、その意図や考え方、先行きの課題について考察する。