【Research Report】GRスコア企業109社における取締役会構成とスキルマトリックス開示状況について

サマリー

取締役会は株主からの委任を受けて企業価値の最大化に努めることがその責務とされており、とりわけ取締役会構成は経営の執行と監督の分離を果たすうえで重要と考えられている。そのため、コーポレートガバナンス・コード(以降、JCGC)や国際的な機関投資家団体が表明するICGNグローバル・ガバナンス原則(以降、ICGP)は取締役会の構成について言及している。日興リサーチセンターでは、これら二つの原則を基にしたスコア(GRスコア)を開発し、取締役会構成をその評価の一項目としている。本稿では、GRスコア2022の対象企業109社における取締役会構成について、2021年9月の改訂ICGP、2021年6月の改訂JCGCを踏まえて、主に独立社外取締役や女性取締役の就任状況、スキルマトリックスの開示状況について集計・分析を行った。
2022年4月からの東証市場区分の変更により、プライム市場上場企業には、よりグローバル基準に近い条件が求められているが、その対応状況はGRスコア対象企業においても徐々に進みつつあることが確認はできた。だが、GRスコア対象企業109社でみた場合、取締役会に占める独立社外取締役比率が過半数の企業は29社、女性取締役比率が30%以上の企業は5社にとどまるなど、グローバル基準を充足する企業は一部にとどまり、平均的には未だ十分とは言えない水準にあることも明らかになった。
JCGCでも開示を推奨されたスキルマトリックスについては、スキルとして設計されている項目は玉石混合である。設計されたスキルの中には、取締役に求められるスキルの説明が具体性に乏しかったり、その定義や該当基準が不明瞭であるといった課題もある。スキルマトリックスは、各社の中長期的な経営戦略の推進、取締役会の実効性向上など経営陣の意識を喚起する側面、投資家が取締役個々のスキルと取締役会全体のスキル構成を検証する上で有益な情報になり得る側面などがあるだけにその説明内容の充実・明確化を図る必要があろう。

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