【Short Review】ポートフォリオの予想温度上昇(ITR)の計測

サマリー

 気候変動への懸念が高まるなか、金融業界においても脱炭素に向けた取組が急ピッチで進んでいる。カーボンニュートラルの達成を目指す金融機関の有志連合である「ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)」の発足はその1例だ。
 金融機関がネットゼロを目指すうえで、投融資先企業の温室効果ガス(GHG)排出量(ファイナンスド・エミッション)の把握が必要になる。ファイナンスド・エミッションはGHG排出量の国際的な算定基準であるGHGプロトコルにおいてスコープ3のカテゴリー15 に分類され、金融機関のGHG排出量の大部分を占めることになる。
 GHG排出量の数値をそのままでは気候変動にどの程度の影響があるのか実感が湧きにくい。そこで、投資ポートフォリオのGHG排出量を将来の気温上昇に換算した「予想温度上昇(Implied Temperature Rise, ITR)」という指標が考案されている。ITRを用いると、例えば「この投資信託に投資すると3.5度の気温上昇につながる」といった表現ができ、気候変動への影響の大きさが直観的に伝わりやすい。
 本稿ではITRについて調査した結果を報告する。第2章でITRの概要等について述べ、計算式を説明する。第3章では、GHG排出量と企業活動のデータを用いて実際にITRを計算し、考察する。第4章では、3つの算出機関が提供するITRを比較し、個別論点や課題について述べる。
 

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