【Short Review】DICEモデルによるカーボンプライシング
- 2021年10月14日
投資工学研究所
- 伊藤 央峻
サマリー
脱炭素の実現に向け、炭素に価格をつけて温室効果ガス排出を抑制するカーボンプライシングが注目されている。世界銀行によると、64の国・地域に炭素税または排出量取引によるカーボンプライシングが導入され、世界の排出量の21.5%がカバーされている。この分野で先行するのは欧州だが、中国でも2021年7月に二酸化炭素(CO₂)の排出量取引が始まったほか、日本も2022年度の排出量取引市場の実証開始を目指している。
炭素にはどれくらいの価格をつけるのが適正だと考えればよいだろうか。安過ぎると排出抑制効果が薄れるが、高くなるほど支払う側の負担は大きくなる。
本稿では、2018年にノーベル経済学賞を受賞した米イェール大学のウィリアム・ノードハウス教授が開発した「DICEモデル」 を使い炭素価格や気候変動について考察する。DICEモデルはマクロ経済学や地球物理学に基づく関係式で構成されている。より複雑なシミュレーションに用いられる手法と比べると小規模になるものの、炭素価格を計算でき、経済と気候変動との関係の理解にも役立つ。