【Research Report】2021年3月期 地方銀行の有価証券利回りに関する要因分析

サマリー

 日本銀行による量的・質的金融緩和が行われた2013年4月以降、超低金利環境が継続し、地方銀行にとって貸出や有価証券運用による収益の獲得が厳しい状況が続いている。その中で地方銀行の有価証券利回りは、2018年3月期から貸出金利回りを上回って推移しているものの、2021年3月期の有価証券利回りは大きく低下している。
 本稿では地方銀行の有価証券運用の資産クラスを円貨債、株式、外国証券、外国証券を除くその他の証券(以下、投資信託等)に分け、重回帰分析を用いて資産クラスごとの平均的な利回り(以下、推定利回り)を過去7年分について年度ごとに推定した。その結果、2021年3月期は円貨債、株式、外国証券の推定利回りが前期と比較して大幅に低下している一方で、投資信託等は大幅に上昇していることが分かった。また、アセットアロケーション(資産クラスの構成比)による地方銀行の有価証券利回りに対する説明力(修正決定係数)は過去7年間で0.9を超え非常に高い状態で推移しているが、2021年3月期は過去7年間で最も説明力が低い結果となった。
 2020年3月期から投資信託解約損益(以下、投信解約益)を把握することが可能になったこともあり、有価証券利息配当金に含まれている投信解約益を除いた有価証券利回りを用いて資産クラスごとの推定利回りおよびアセットアロケーションによる説明力を分析した。その結果、2021年3月期の投資信託等の推定利回りは、投信解約益を含む場合の推定利回り2.25%に対して投信解約益を含まない場合は1.17%と1.08%も低いことが分かった。
 資産配分比率の有価証券利回りに対する感応度(資産配分比率の比率を上昇させたときの有価証券利回りの上昇あるいは低下幅)を調査した結果、円貨債比率の感応度は各年度においてマイナスとなっている一方で、株式・外国証券・投資信託等の比率については、どの年度においても感応度がプラスとなっており、株式やその他の証券などのリスク資産の比率が高いほど有価証券利回りが高いことが確認できた。

サービス・事例紹介

この記事に関連する当社のサービスや事例のご紹介をご希望の方は、下記よりお問い合わせください。
担当研究所・研究員からご案内をいたします。

ご意見の投稿

この記事についてご意見をお聞かせください。
今後のサイト運営や、レポートの参考とさせていただきます。

  • 戻る
  • ページ先頭へ戻る