【Short Review】金融機関の気候変動に関する開示状況調査
- 2021年12月23日
資産運用研究所
- 常泉 和也
サマリー
地球温暖化による気候変動が財務へ与える影響を把握する手段の一つとしてシナリオ分析の取り組みが始められている。また、わが国における最近の金融機関向け気候変動政策においては、日本銀行が2021年9月に気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションの実施を発表し、民間における気候変動対応を支援することになった。
本稿では、投資家向けの気候変動情報の開示方法を示したTCFD提言を踏まえ、銀行が気候変動への対策について現状どのような開示をしているか、さらにシナリオ分析にどのように取り組んでいるかについて調査した。
その結果、TCFD提言に基づく開示に向けた取り組みについては、都市銀行、一部の地方銀行が先行して始めており、その他の地方銀行、第二地方銀行については検討段階、もしくはこれから取り組みを始めていく状況にあることがわかった。また、異常気象の発生等その影響が甚大となっている気候変動リスクに備えるためにはシナリオに基づく対策が重要になるが、本稿にて分析対象とした銀行の2021年3月期の統合報告書・ディスクロ―ジャー誌、HP等における開示では取り組み状況に大きな差があった。しかし、日本銀行による資金供給オペレーションの貸付対象先についてはTCFDの提言する4項目の開示を要件としていることからも、今後ますますTCFD提言に基づく気候変動対策の情報開示が広がっていくと考えられる。