CSR的投資動機と主観的投資満足度について~実験経済学による株式売買実験による検証~
- 2006年1月31日
社会システム研究所 CSR調査室
- 立石 隆英
サマリー
企業の生活との関連、社会性、職場としての興味に関する動機と金銭面を考慮した場合としない場合の投資満足度を実験経済学による株式売買実験によって収集している。本稿では、構成概念として動機データに「CSR的投資動機」、投資満足度データに「主観的投資満足度」を想定して共分散構造分析でこれらのデータ間の関係を検証した。結論として「CSR的投資動機」が「主観的投資満足度」を高めると推論できる。個人の生活の文脈に関わる動機が株式投資に反映され、しかもその評価が売却時に高く維持されると金銭的損失があっても満足度が高い。「社会にとって良いことは良く、悪いことは悪い」という人間の心のありようは演繹的な理論の公理では解釈できないが、実験経済学的にはこのような心のありようが投資動機にもなり、さらに満足度を高めうることが分かる。個人投資家が現実の人間であると考えれば、このようなCSR的投資動機に応えるような環境を整えることが望ましい。企業の発するIR情報にCSR的評価が可能となる情報を充実させるとともに、投資家向けの投資教育ではCSR的視点にもとづく徳育的な要素が求められよう。株式投資をすることでCSR的価値観でも満足が得られるような資本市場の環境を整えてゆくことが心豊かに暮らせる社会を構築する責任を果たす一助になると考える。