企業の社会的責任と人間性についての考察

サマリー

企業、行政、医療などの様々な組織体ないし社会的共同体において不祥事が繰り返し散見される。このような不祥事は個々人の生活に関わる部分が多く、個々人の生活の質を低下させる要因となる。心の豊かさを充足できるような、より高い生活の質への期待を裏切る要素である。このような様々な社会的共同体の不祥事を背景に、その組織体の社会的責任に対する関心が高まっている。しかし元をただせば、これは個々人の社会的責任に対する意識、もしくはその人間性が問われている社会現象ととられることができる。個々の人間性が低位にとどまり続けるとは考えられないが、身近な公共の場における公衆マナーの悪化をみるかぎり、人間性が低位になりがちであることは否めないのではないか。このように考えると、個々人の生活の質が改善するも悪化するも、社会的共同体を構成する最小単位である個々人の心のありように大きく依存すると考えることができる。これは企業という共同体の社会的責任を考える場合も同様のことが言える。企業を構成する個々の経営者、従業員の社会的責任に対する意識を再考しなくては、その意義は薄いだろう。社会的責任に対する意識を高めて、それを維持するには明確な企業理念とその実践が求められる。その意味で、今後、企業の経営者、従業員が社会的責任を考える場合に、額縁に入っていた企業理念を社会的責任の視点から再考し、実践することが望ましい。そして、この実践には、企業を構成する従業員個々人が人間性の向上に目覚めない限り、企業理念はまさに画餅にすぎず、企業の社会的責任の必要性をいくら声高に叫んでも効果が期待できないだろう。社会的共同体としての個々人の生活の場への影響力が高い企業の社会的責任は重く、個々人が、その生活の場においてより高い生活の質を享受できるような社会を想定するには企業を構成する人間の人間性の良い面を引き出すために徳性を考慮した明確な企業理念とその実践が必要不可欠であると考える。

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