日本株ヘッジファンドの運用状況~株式ロング・ショート戦略とマーケット・ニュートラル戦略~

サマリー

ヘッジファンドの特徴の一つは、相場環境に依存せず、絶対収益の獲得を目的としている点であるが、パリバショックに始まる過去数年間の金融市場の混乱の影響も受けず、本当に収益を獲得できていたのだろうか。そこで、本稿では、主に国内株式に投資を行うヘッジファンド、及び、それらの運用戦略(株式マーケット・ニュートラル戦略、株式ロング・ショート戦略)を採用している投資信託の合計30本を対象に、株式市場の下落局面(2007年7月~2009年2月)及び、株式市場の上昇局面(2009年3月~2010年4月)において、収益をどのように得ていたのかについて調査した。パフォーマンス関連指標として、ファンドのリスク・リターン、株式市場に依存しないファンド固有のリターン(α)、株式市場への感応度(β)を推計した。

その結果、①リターンが株式市場の下落期においてマイナス、上昇期においてプラスであったファンドが大半であり、②株式市場の局面に依存せずプラスの収益を得ることができていたのは、少数であったことが明らかになった。つまり、日本株式型ヘッジファンドのパフォーマンスは、株式相場に依存する傾向があったといえる。

①に該当するファンドのうち、「株式ロング・ショート戦略」を採用している投資信託は、推計期間中は平均してロングポジションであったと推計された。つまり、これらのファンドは、株式のポジションを適切に変化させることで、絶対収益を獲得できていなかったといえる。その他の①に該当するヘッジファンドや「株式マーケット・ニュートラル戦略」を採用している投資信託においては、概ね株式市場リスクからの影響は限定的であったと推計された。しかし、大半のファンドにおいて、αが株式市場の下落期マイナス、株式市場の上昇期にプラスであり、αも株式相場の影響を受けていたと推測される。
②に該当するファンドは、30本中4本のみである。このうち3本は、αとβの推計結果から、「株式マーケット・ニュートラル戦略」により収益を得ていたと推測される。残りの1本については、株式市場の下落局面から上昇局面にかけて、ポジションが若干のマイナスからプラスに推移したと推計されたことから、βをコントロールすることにより、収益を得ていたと推測される。
以上の調査結果から、いわゆる株式ヘッジファンドは、αの追求が基本にあるが、とりわけ、「株式ロング・ショート戦略」においては、株式市場の局面に応じて、感応度を適切にコントロールできるかが、収益を得る上でのポイントになると思われる。

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