日本市場における非時価総額加重平均インデックスに関する一考察~株式市場とREIT市場におけるリターン、リスク、スタイル特性~

サマリー

CAPM(Capital Asset Pricing Model)を前提とすると、需要と供給の均衡から、すべての銘柄をその時価総額に応じてウェイト付けして得られるマーケットポートフォリオが、リターン・リスク比で最も効率的なポートフォリオであるという結論が導き出される。しかしながら、時価総額加重平均インデックスに関して、その非効率性を指摘する研究が数多く発表されている。その中の1つに、銘柄の価格がフェアバリューから大きく乖離した時、割高銘柄の組み入れ比率が高く、割安銘柄の組み入れ比率が低くなるため、これが長期的にみてリターンの劣化に繋がっているという指摘がある。
そこで、株価を用いずにウェイト付けをする方法がRobert D. Arnottらにより考案された。彼らが考案したのは、株価は企業の経済規模を反映して価格付けされるはずであるという立場に立ち、一般的に経済規模を示す次の4つの指標、①売上高、②キャッシュフロー、③支払い配当総額、④純資産、に着目し、これらを合成した非時価総額ウェイトを用いる方法である。米国の研究によると、この非時価総額加重平均インデックスは、時価総額加重平均インデックスと比較してリターン・リスク比でより効率的であるという結果が報告されている。
本稿では、非時価総額加重によるウェイト付けを日本の株式市場とREIT市場に適用した場合、それぞれの市場において、米国で報告されたようなリターン、リスク、スタイル特性が確認されるのか否かを検証した。その結果、非時価総額加重平均インデックスは、株式市場、REIT市場ともに時価総額加重平均インデックと比較して、リターン・リスク比でより効率的であるという検証結果が得られた。次に、2つのインデックス間でリスクに有意な差が見られなかったものの、それぞれのリターンが異なっているという検証結果に対し、この原因が米国で報告されているようなスタイル特性によるものなのか否かを検証した。その結果、非時価総額加重平均インデックスは、株式市場、REIT市場ともに時価総額加重平均インデックスと比較して小型、バリューのスタイル特性を持つことが確認され、これがリターンの異なる原因であることが示唆された。

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