【Short Review】「顧客本位の業務運営に関する原則」と投資信託販売における変化
- 2020年7月22日
社会システム研究所
- 小原 萌香
サマリー
2017年3月、金融庁は「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定した。政府が掲げてきた「貯蓄から投資へ」の実現を目指すうえで、近年は特に、日本の高齢化に沿った長期的な資産形成や、投資家に対する金融の情報提供や知識習得のサポートなどが課題とされている。そこで金融庁は、米国や欧州にて取り入れられていたフィデューシャリー・デューティーの概念を「顧客本位」と捉え、「顧客本位の業務運営に関する原則」(以下、「原則」)という形で金融事業者に受け入れを呼びかけることで、何が顧客のためになるかを金融事業者が真剣に考え、より良い金融商品・サービスの提供のために互いに競い合うことを目指した。
「原則」の策定後、金融庁は顧客本位の業務運営の定着に向け、取組みの「見える化」を図るため、2018年6月には「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPI」を公表した。「原則」を採択した事業者、並びに「自主的なKPI」・「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPI」を公表した事業者数は年々増加しており、一部には取組みの好事例も認められている一方で、取組み成果未公表の事業者が散見される、取組み成果の内容が分かりにくい、などの指摘もあり、「原則」の策定から3年経つも定着に向けては未だ道半ばといった状況にある。そこで今回は、「原則」の策定による投資信託の販売に関する変化について、商品分類別の投資信託の平均保有期間の推移、投資信託の規模の変化、バランス型ファンドの資金動向を確認する。